骨まで愛して 小泉武夫

マグロ専門の仲卸店で

巨大なマグロをてきぱきと解体する「捌き屋」

鳥海五郎は55歳となり、満を持して長年の夢であった

「粗屋」という料理屋を始める

粗というイメージはあまり良くない

生臭いし捨てられるものだと思われている

しかし粗には頭、目玉、骨、ヒレ、皮、血合い、中落、白子など

使えるところがたくさんある

さらに粗には栄養がある

カルシウムやマグネシウム、カリウム、リンと言った

重要なミネラルが多量に含まれている

五郎は近頃の日本人が骨粗鬆症や精力減退を訴えるのは

ミネラルが不足しているからだと考えていた

しかも粗には旨味がある

材料のあらは付く地から新鮮な状態でいつでも手に入る

出てくる粗料理の数々の美味そうなこと

それを際立たせるのはシズル感たっぷりの

コピリンコ、トロットロ、ジュルジュルなどの小泉用語だ

特に私は夏の海鼠腸酒

食前のヒラメの骨酒

食中の真鱈の白子酒

食後のオコゼのヒレ酒などがとても興味深かった

粗を発酵させたものに発見される素晴らしいパワー

地方の粗料理の興味深さなど楽しい発見が多かった

廃棄処分の粗に着目して

口福料理小説としてだけではなく

持続菜能な環境経済小説までに仕上げているところが

小泉先生たるところだ

興味のある方は是非一読していただきたい!